【ヨコハマ・トラディショナル・ラーメン】『麺場 浜虎』でラーメンを頂く。
突然だが、皆さんは【ハマトラ】という言葉をご存じだろうか。
それは、ヤングジャンプで連載されていた漫画のことではなく、70年代に女性ファッション誌の企画から生まれたファッションスタイルのことだ。神戸発のファッションが【ニュートラ】と呼ばれ一世を風靡したように、この【ハマトラ】もファッション界の一世を風靡した。ポロシャツ、ベストやカーディガンの組み合わせ。タータンチェックの巻きスカートにハイソックスにパンプスといった、当時では斬新なキャンパス・ファッションだったのだ。
お洒落な街、横浜。
そんな洒落た文化はファッションだけには留まらず、ラーメン業界にもその影響を与えた。その影響を色濃く受けた横浜イチお洒落なラーメン店は、横浜駅からほど近い鶴屋町に店を構える『麺場 浜虎』だ。
扉を開けて、まず目に飛び込むのは見たこともない従業員の制服だろう。大体のラーメン店で働く人々の服装と言えば思い浮かぶのが、Tシャツに前掛けなのだが……なんとこの『麺場 浜虎』で働く人々は「つなぎ」姿でラーメンを作っているのだ。
フェアレディZ140やハコスカ、ケンメリを今宵のナイトクルージングに備えて整備しているのであればまだしも、ラーメン店の制服で「つなぎ」は、なかなかにインパクトがある。
店の内装も、決して気取らずやもすれば軽い立ち飲みバーにでも早変わりしてしまいそうな、いい具合の解放感があり女性一人でも入りやすい。カウンターとテーブル席が分かれて設置されているのもあり、ゆっくりとラーメンを味わうことが出来る店内設計だ。
そして、ラーメンは食券制。この日は、定番とされている『醤そば』をオーダーすることにした。
『醤そば』¥700
まず、一目見た瞬間に違和感を感じた。その正体はチャーシューにあった。ここ『麺場 浜虎』の提供するラーメンのチャーシューは、豚ではなく〝鶏〟なのだ。
驚きを隠せないまま、スープをレンゲで一掬いすする。強烈だ。鼻を抜けるのは強烈な〝魚介感〟だ。鳥ガラと魚介の計算されつくしたバランスが、しっかりと鶏ガラを感じさせつつ魚介でボディをえぐりにくる。余りに隙の無いヴォルグ・ザンギエフのフィニッシュブロー・ホワイトファングのようなコンビネーションだ。
正直に言おう。スープの一啜りだけで私はこのラーメンの虜になってしまった。
お次は麺だ。太さは太麺のちぢれ麺。これを持ち上げるとスープの表面に浮いた、これまた魚介系のXO醤を絡め取ってずっしりと重いのである。口にすると、ぶつぶつと歯切れの良さが際立つ太さは、黄金のバランスの上に立っているスープとの相性もあって箸が止まらなくなる。現在週刊少年ジャンプで連載中の『食戟のソーマ』では蕎麦対決をやっているが、その対決の審査員と同じように気が付くと麺が底を突いていたという具合だ。
勿論、個性的な〝鶏〟チャーシューも見逃せない。この上なく柔らかく調理された鶏チャーシューは、舌の上で転がすだけで繊維がほぐれ飲み込めるほど。脂身の少ない〝鶏〟をチャーシューはもっと全国的に広まってもいいはずだ。
そして、大盛りにしておくべきだったか、という後悔ごとスープも完飲。
古き良きヨコハマ・トラディショナル、通称【ハマトラ】は確かに、ここ横浜の地に根付いていたのである。『麺場 浜虎』。横浜においでの際は脚を伸ばしてみてはいかがだろうか。
肥後ばいそん
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