Studio A.D.S.

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【ダンスフロアに柔らかなヒカリ】『アフターアワーズ』を読む

起床は9時10分――これは、毎日のルーティン。

そこから身支度を整え東横線に乗り込み、満員電車に揺られながら渋谷で半蔵門線に乗り換え職場へ向かうのだ。その狭い社内でふと頭に浮かんだのは、未だに世界からなくならない“戦争”についてだった。

人類が文明を開いて幾星霜。
こんなにも生活は豊かになったのにも関わらず、人々は心の余裕を失い原始の時代から変わらぬ争いを続けている……なんと不毛な争いなのだろう、と車窓から見える朝日煌めく多摩川の水面を見ながら、きのこたけのこ戦争について想いを巡らせていたのである。

あ、私はきのこ派です(火種)

さて、今日フィーチャーするのはこの作品。

アフターアワーズ(1) (ビッグコミックス)

『アフターアワーズ

著者は西尾雄太先生、連載誌はヒバナ小学館)。

↓↓↓作品紹介
ミラーボールの下で出会った不思議なおねーさんに手を引かれて、飛びこんだ夜の東京。そう、あたしたちの遊び場は、きっとここだ。 ガールとガール が加速する、きらめきの青春譜。
ヒバナ公式HPより引用)

 

■人は何を求めてミラーボールの下に集まるのか

クラブ、という場所に行ったことが皆さんはあるだろうか?
週末、若者たちが何かを求めて集まる場所。目もくらむような眩しい光と、耳をつんざくような大音量をまき散らすスピーカー。熱狂したように踊る人々。充満する熱気と、むせ返るようなタバコとアルコールのニオイ……クラブといえば、大体の人間がそんなイメージを抱くであろう。

と、大口を叩いてはいるが、私自身そういった場所に足を踏み入れたのは6年ほど前に友人に連れられて行った、たったの2回だけだ。理由はシンプル、夜遊びの暇つぶしだった。初めてダンスホールに降り立った時は、とても驚いたのを覚えている。いや、驚いたというよりも新鮮だった。目の前に広がる光景が、それまで知らなかった――知ろうとしたことすらない世界だったからだ。

その空間は、それまで自分が思い描いていたような〝クラブのイメージ〟とは、少しだけ違っていた。フロアのステージでその日一番のアッパーな選曲をクラウドに届けるDJ、汗を流しながら中央でブレイクダンスを披露し喝采を浴びるB-BOY、かと思えば隅っこでは熱烈なキスを交わす外国人のカップル。ゆったりとグラスを傾けながら、アンビエントに身体を揺らす女性。

そんな、多種多様な人間が多種多様な楽しみに興じていた。粗野な空間だとばかり思いこんでいたその場所は、人々が日常を忘れて思い思いのカタチで、その時間と空間を楽しむ場所だったのである。

この『アフターアワーズ』は、そんなクラブという非日常的な空間の中で始まるガールミーツガールの物語。友人に誘われるままクラブにやってきた朝比奈エミは、ミステリアスな女性・ケイとダンスホールで出会う。

クラブというシリアスなイメージが付きまといがちな空間の中でも、その内容は実に爽やか。エミが、ケイに惹かれながら“ライト・アンド・ミュージック”の中で繰り広げる青春譚はとても清々しい。クラブという場所は人と人をつなぐ場所でもあるのだ。

…………エッッッモ!!(素が出た

ちなみに、『アフターアワーズ』にて登場する実在のレコードを著者の西尾先生がコミスン(小学館)にて解説されている。そちらも併せて読むと、更に楽しめるはずだ。

■著者の西尾雄太先生について

西尾先生は『STAG』という名義でイラストレーターとしての活動もされている。しかも、本職は書店の店長だというのだから驚きだ。その辺りの話に関してはインタビューの記事が見つかったので、そちらを参照して貰えればイイと思う。西尾先生の絵はとても表情が豊か。シーンやシチュエーションによって千差万別の色を見せる『アフターアワーズ』のポップ&キュートな登場人物は、コマの中でイキイキと輝いて見える。

■最後に

昨今、クラブを舞台にした作品はそれなりに見られるようになった。集英社が運営するweb漫画サイト・ジャンプ+で連載していた『とんかつDJアゲ太郎』(原案:イーピャオ/漫画:小山ゆうじろう)や『DJ道』(ムラマツヒロキ/秋田書店:チャンピオンクロス)などがそうだ。少し毛色は違うが『クラブDJストーム』も挙げられるだろう。今日紹介した『アフターアワーズ』は、どの作品とも違う〝クラブの空気〟を感じることが出来る作品。エミとケイ、二人が開いていく新しい世界から目が離せない。

 

肥後ばいそん

 

↓↓↓外部リンク

(▲西尾雄太先生本人HP)