Studio A.D.S.

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猿が完全武装している!『モンキーピーク』で死人が出るぞぉ!!

 

いつの時代も、一定の人気を誇るデスゲーム系の物語。

バトル・ロワイアルのブームの際には、無理矢理殺し合いを強要される作品が流行しました。

リアル鬼ごっこ王様ゲームのブームで、命がけのミッションに挑まされるタイプのデスゲーム作品も増えました。

 

そんなデスゲーム系と似て異なるジャンルとして、常に一定の人気を誇るのが、サバイバルホラー作品です。

まあ一緒の括りにされてることも少なくはないし、私も綿密に区切れているわけじゃあないんですけどね。

隔離された空間でバッサバッサ殺されていく、ゲームでもなんでもなくただの虐殺のようなやつですね。

主人公たちを襲うのは殺人鬼であることもあれば、クリーチャーであることもあります。

 

昨今では、ファンタジー化した実在の生物がクリーチャーを担当する作品が流行り出したという印象を受けます。

渋谷金魚空飛ぶ人食い金魚とか、巨蟲列島巨大化した虫とか、ジンメン人面動物とか、そういうのですね。

凶暴化した動物系は昔からあるジャンルではありますが、最近またよくパワープッシュされてるなあと思うわけです。

 

そんなわけで、今回は2巻も発売されたモンキーピークについて語りたいと思います。

殺人猿と戦うサバイバルホラー漫画ですね。

猿というか、限りなくベン@D-LIVEみたいなヤツなんですけども。

 

モンキーピーク 1

 

詳細なネタバレまではしてませんが、モンスターである猿を語ったりする際に2巻収録分の内容までは触れているので、ネタバレを避けたい方は回れ右をば。

 

 

【モンキーピークの魅力① クリーチャー枠の武装した猿がヤバい】 

もうすでに上に貼った画像でお分かり頂けたかと思いますが、モンキーピークの殺人猿、見た目はナマハゲに近いです。

表情の読めない顔面で、画像からも分かる通りバスバス鉈を振るいます。

そう、この猿、メインウェポンはです。

動物がクリーチャー化してる場合、大抵その生物の攻撃手段を持って人類を苦しめることが多く、また同時にその生物の生体が弱点に繋がることが多いのですが、この猿に関しては全くそんなことがありません。

それはもうブンブン鉈を振り回し、人間をバッタバッタと斬り殺します。

猿の腕力があれば、別に特別な攻撃手段なんか使わなくても、普通に鉈で殺せるのでしょうがないですよね。

よく考えたら、捕食したいわけでもないなら、わざわざ固有の攻撃方法なんかせず効率よく道具使ってぶっ殺す方が楽チンだもんな……

 

まあ勿論、思考回路も動物レベルのクリーチャーには、道具なんて使うことが出来ないでしょう。

しかし猿は頭がよく、人間と同様に道具を扱える動物です。

だけでなく弓矢も扱い、遠近ともに隙がない装備で挑んできます。

字面だけならギャグなんですけど、実際弓矢を構えた時の「あっ、これヤベえ!」感は尋常ではありません。

ホラーにおける「おいおいそんなのありかよ!やべえ!」は大体大ピンチに直結するのです。

 

幸い鉈と違って弓矢は扱いが難しいらしく、攻撃を外してくれることもありました。

ただ、やはりそこは知能の高い動物だけあって、誘き寄せて近距離射撃をしたり等、立ち回りでカバーしてきます。

脱水症状で判断力が低下している人間よりも、数段賢いと言えるでしょう。

クソ煽りをかまして判断力が低下した人間を誘き寄せ、攻め込もうとしたら弓矢を構えてオーバーキル射撃をする様は、まさにベンを彷彿とする恐ろしさ。

まあベンは猟銃にジャケットだったので、装備の面ではこちらの猿の方が弱いのですが、何せ今回は人類側もD-LIVEと比べたら相当格落ちしますからね。

 

まあそんなこんなで、この猿の強みは、道具を使えること頭がいいことなんですよ。

例えば、大体のモンスター登場系サバイバルホラーって、大体冒頭で大量虐殺が起こるんですね。

モンスターが町単位で現れる場合は、ファーストコンタクトバカスカ殺られて街が半分壊滅状態になったり。

閉鎖空間での場合でも、モブみたいな連中が何人かやられてメインキャラを残し壊滅することで敵のヤバさを表現したり。

そうやってモブを虐殺することで殺傷能力の高さを読者に見せつけて、モンスターのヤバさを表現することが多いのですが、モンキーピークの猿はその逆なんです。

頭がいいため『効率良くぶち殺す』という思考ができ、そのため大量虐殺なんて非効率的なことを早々にやったりせず、むしろ最小限の殺戮で知能の高さを見せつけるのです。

 

具体的に言いますと、人間40人に対して、真っ向から壊滅させに来るなんてことはしません。

そんなスペックだけに頼って脳死状態で攻撃ブンブン振るようなモンスターとは違うのです。

ちゃんと人間側が寝静まった頃を見計らって、4人だけを殺します。

道中目撃されたりもしますが、遊んで無闇に虐殺することなどなく、さっさと闇夜に行方を眩ませます。

そして偶然か否か、参加メンバーの携帯を集めて管理していたオッサンが死者に含まれていたため、一行は携帯電話を失ってしまうことになったんですね。

この猿、わざとだとしたら、完全に携帯電話の強さを理解してやがるぜ……!

 

まあ普通に考えたら猿が携帯電話なんて理解できるわけがないんですが、しかしながらこの猿なら携帯電話くらい使えてもおかしくはないんですよね。

何せこの猿、看板を一から自作するような猿ですから……

勿論文字は日本語のソレであり、かなり知能が高いことを意味します。

ちなみにこの猿お手製の偽看板は下山ルートの分岐点に仕掛けられており、脱出するはずが死の山に突っ込んでしまうという展開に繋がるんですね。

警戒して集団でいるタイミングでは決して襲わず、的確にホームグラウンドに引きずり込む手腕、そこらのへっぽこ殺人鬼にも見せてあげたいですね……

まあ、既存の看板の向きを変えたり、ちゃんと同じように古びた感じを出せなかったりしたあたりは、所詮猿知恵ということなのかもしれませんが。

 

しかも猿の効率的プレイングはそれだけには留まりません。

ほとんど崖のような傾斜の階段『矢ノ口落とし』に集団の大半が差し掛かるまで、しっかりひっそり身を潜めてます。

そして大半が階段を降り始めたところで、最後尾からこんにちは☆と言わんばかりに鉈で人間をバターのように切り裂きます。

しかしここでただ最後尾を虐殺したんじゃあ、ただの脳筋モンスターと変わらない!

この猿の凄い所は、階段を使わず逃げようとした人間からバスバス殺すことによって、パニックになった人間達を急傾斜の階段へと逃げ込ませたことなんですね。

当然、そんなところでパニクりながらダッシュしたら、将棋倒しが発生します。

これにより、直接鉈を振るうよりも沢山の人間が墜落死してくれるじゃあありませんか!

勿論打ちどころが悪く即死した人もいれば、重傷止まりの人もいますし、先に落ちた人の上に落下して軽傷で済んだ人もいます。

全滅まではまだまだ遠いです。

 

モンキーピーク 2

しかし、この適度に負傷者を出しておくのもミソなんですよね。

これで1人や2人の負傷なら背負って歩くという選択肢があったかもしれませんが、10人近くが負傷したらそうはいきません。

骨折や意識不明の重傷者は待機させ、動ける人間で山を上り救助を呼ぶ必要性がでてきます。

『猿は階段の上にいるので、引き返せない。険しい山を行くしか無い』という状況を作り出した猿の作戦勝ちというわけです。

こうしてパーティを分断させ、しかも戦力を偏らせることで、適当に健康勢を進ませたあとで悠々と弱ったチームを壊滅させればいいのですから。

勿論、パーティー分断には残されたチームが全滅はしまいという計算があったのですが、その根拠である『猿はひたすら長い崖のような階段の上にいるので、降りてきたら早々に分かる=動ける人間は避難が出来る』を覆し、奇襲だってかけちゃいます。

猿なんだから、道なき道を行けるし崖の部分をヒョイヒョイ移動できるんじゃボケ!というわけですね。

 

これは 2巻の山小屋戦においても遺憾なく発揮されます。

脱水症状になりかけながらも水や連絡手段を求めノコノコと山小屋へやってくる生存者を、崖を先回りして射抜いてくれるんですね。

それだけでなく、山小屋にある水のペットボトルを、脱水症状の連中の眼前でひっくり返すんだから、こやつ煽りが巧みすぎる!

「いえーい」とでも言わんばかりにドバドバ水を捨てていく様は、あまりにもエンジョイ勢で見ていて笑ってしまうんですよ。

そして脱水症状で判断力を失いクソ煽りに顔を真っ赤にして来たやつを返り討ちにすると、今度は姿を消すんですけど、置き土産として山小屋に青酸カリ入りのトラップ飲食物を仕込んで帰っていったんですね。

そして当然のように始まる阿鼻叫喚。

近距離ならナタで人体をバターのようにぶった切れ、遠距離ならば弓を使い、脱水症状という状態異常回復決させるキーアイテムには青酸カリをぶち込むことで回復を防ぎ、的確なクソ煽りと戦略で慎重に攻撃してくるモンスター、控えめに言っても強すぎる。

 

 

【モンキーピークの魅力② 大自然の脅威がヤバい】

 そんな頭脳派モンスターである猿に加えて、舞台である山もまた、主人公たちに遅い来る脅威となってます。

『モンキーピーク』『ピーク』部分ですね。

 前述の通り、崖のような急階段である『難所・矢ノ口落とし』では猿によって将棋倒しで転落させられるし、中岳小屋への道は見晴らしがよく高低差のある一本道なため狙撃スポットとなっているしと、あらゆる地形が猿の味方をします。

まあそもそもに、トラップ看板とかで、基本的に猿の有利なエリアに誘導されてますしね。

 

そんな風に、基本的に猿が効率よく殺人を犯すための舞台装置としての優秀さが目立つ山ですが、しかし猿抜きでも恐ろしい存在なのです!

そもそも登らされている岩砕山「登山者を襲う猿の伝説」があるだけでなく、そもそもに世界で二番目の多くの死者を出している難所だらけの山として有名とのことですからね。

猿がいなくても本来死んでもおかしくない場所なわけですよ。

 

そして、山の死因は何も滑落だけではありません。

予定外の行軍による疲労水分不足こそ、命を落としかねない状況への入り口なのです!

第一話ラストで突然猿が出てくるまではガチの山岳物かと思われていた程度には、登山に対する描写が丁寧でしたからね。

その辺もしっかりと描写してくれます。

猿が出てこない時は、如何にして強大な自然に立ち向かうかが鍵となるのです。

 

そして上でも軽く触れましたが、山の恐ろしさの一つである『脱水症状』が、モンキーピークではメインで取り上げられます。

本来の山越えに必要な水分量を示すことで、説得力もバツグン。

脱水症状になると短絡的になることを明記することで、人間同士の内ゲバもそれなりに納得がいくようにもなってますしね!

そんなこんなで水分確保が序盤のメインミッションとなりますし、水を求めて訪れた中岳小屋で、2巻のメインとなる内輪揉めの火蓋は切って落とされるのです……

 

 

【モンキーピークの魅力③ 登場人物はそんなにヤバくない】

昨今は主に少年漫画やティーンエイジャー向けの映画などでデスゲームが流行っていることもあって、この手のサバイバルホラーでも学生主人公がほとんどでした。

ところがどっこい、モンキーピークは製薬会社の社員が山を舞台に猿と戦う物語なので、全員成人しているんですね。

それもあってか、あんまりキャラクターが少年漫画的じゃないというか、普通に長編会社ものとかでありそうな造形のキャラが大勢います。

タチの悪いジョークを言ったり不平不満を口にすることが得意な無能上司とか、プライドが高く自分がリーダーであることに固執するアラサー経理とか、記号的側面も明らかに少年漫画でなく大人向け漫画快楽天とかそういう方面の意味ではない)みたいなやつなんです。

 

で、そんな会社ものとか登山ものとかで時間かけてエピソード掘り下げられてく感じの連中が、掘り下げられずに死んでいくので、正直キャラはそんなに印象に残りません。

いやまあ、漫画的記号を鼻の穴というブラックホールで吸い寄せてんのかってくらい一人だけ非常に漫画的な鼻の穴先輩とか、正義を暴走させ頼れる兄貴分から冷酷な処刑人へと変わってしまう人なんかは、めっちゃ目立ってるんですけどね。

ただ他のキャラはそこまで濃くはなく、例えば主人公を陥れるチャラ男なんかは、少年漫画的サバイバルホラーの文法ならもっと分かりやすく嫌な奴で目立つエピソードがあってから惨たらしく死ぬ罠にハメるも掘り下げられる前に即死ぬかの二択みたいな場合が多いと思うのですが、普通に特に目立ったエピソードもなくしかし死の危険にも瀕さず順調に生き延びているんですよね。

最後痛い目に遭うポジションにしては悪事も薄味・掘り下げもないという感じなのです。

なので結果として猿が大量虐殺をしないせいで固定メンバーで行動しているわりに、目立つキャラはさほど多くないという印象は拭えません。

 

ただ、それも悪いことばかりではないのです。

漫画的思想の狂人を量産されていないからこそ『脱水症状による判断力の低下』等の症状に説得力が出て来るし、悪意ある陥れ工作も「お前らモンスターおるのにノンキすぎない?」となるほど過激ではなくあくまで自分の利益を追求する“まあギリギリ納得できるライン”で保たれています。

それが独自の空気感を作っているし、プラスに働いているようにも思います。

全員製薬会社の社員ということで上下関係やらも自然に持ち出せるし、更にもう一つ、後述する強みに繋がってますしね!

 

 

【モンキーピークの魅力④ “正体”予想が楽しめる】

さて、そんなわけでモンキーピークの魅力、というか猿のヤバさについてガッツリ語ってきたわけですけども、あれ全部やれるヤツがただの猿なわけがねえだろという話なわけでして。

そもそも被り物である方が自然なビジュアルナマハゲもどきですからね。

人が入っている可能性も大いにありえるわけですよ。

まあ、2巻の強襲シーンではある程度全員揃っているよう見えるため、 その場合単独犯ではないでしょうが、内通者くらいは居てもおかしくないところ。

『猿との内通者』というフレーズも、猿の中に人が入っているのだと思えば、違和感なく思えます。

っていうか、正体は本当に猿だと思ってるのに猿と内通する人間がいると思ってる御一行様、あまりにも水分不足で判断力が下がり過ぎなのでは……

どうやって猿と内通するっていうんだよ……

 

そんなわけで、中に人がいるケースなら、内通者が居る方が展開的にも盛り上がるし、まず間違いなくその展開になると思うんですよね。

治安維持過激派ラグビー怪しすぎたカス上司など、バラエティ豊かなキャラが揃ってますし、内輪揉めを経て真相判明でカタルシスどーん!みたいな(語彙力)

フィクションフィクションしてないせいで 薄味だけど磨けば光るようなキャラもわんさかいますし、こっちの方面に舵を切っても面白くなることでしょう。

 

勿論、ここまでやっておいてマジでただの猿というルートも全然ありなんですよね。

あれだけやれる 猿がマジでいるなら、人間との意思疎通くらい出てもおかしくはないですから!

そもそもあれだけやれる猿がいるかボケと言われたらあまりにも仰る通りなんですが、しかしながら、モンキーピークの設定に大変便利なものがありまして、主人公たちは薬害事件を起こした製薬会社の社員なんですよね。

そしてその薬害事件の詳細はまだ語られていません。

なので薬害云々による突然変異とか、他にも薬関係を猿に絡めることが可能なのです!

当然薬害被害者が復讐のため猿を装って云々ルートにも入れますし、主人公達を定番の学生にせず社会人、それも全員同じ会社の人間にしたことが、ここで活きてきてるんですね。

猿はどうやら主人公達製薬会社の面々に恨みを持っているフシがあるのも、薬害関係の因縁があるからと取れますし(勿論それがミスリードであり、人間に追い出されたから人間全般に恨みがあるってオチかもしれませんけど)

 いずれにせよ、薬害事件を起こした製薬会社社員がメインキャラであるおかげで、猿の正体がどうであろうとそれらの要素を使うことで盛り上がるであろうことが保証されてるですよね。

1巻ラストで明らかに猿でなく人間が殺したような死体が見つかり、2巻では殺人者が紛れているということは主人公を含む数名のみが知ることになります。

その殺人者は果たして猿とつながっているのか、それとも猿とは無関係ながら便乗しただけなのか、はたまた頭のいい猿がアホの人間を仲間割れさせるために敢えて普段と手口を変えたのか等々、考察の余地がわんさかあるというわけですね。

 

何も考えずポップコーンを食べながら読んでも面白く、猿の正体を考察しながら読んでも面白い。

この記事を書き上げるのに凡そ2ヶ月かかったせいで、すっかり2巻発売から日が経ってしまってますが、そんなことは関係ありません。

今からだって追いつけるし、追いつくだけの価値はある面白さ!

さあ、このモンスターパニックブームにおける異端児にもなりそうなモンキーピークを読んで、貴方も流行りにD-LIVEしよう!!

 

……もういっそ開き直って、世界一遅いレビューシリーズでも始めようかしら。